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「【高知県室戸市】「スカイレスト ニューむろと」の歴史と現地レポ-2024年8月訪問」に関連します。
今回は、「スカイレスト ニューむろと」という、高知県室戸市に存在する廃墟について考察します。
概要
1972年(昭和47年)開業の「スカイレスト ニューむろと」は、レストラン・宴会場・結婚式場などを備えた複合施設として建てられました。
総工費は、当時の金額で1億2000万円です。
開業から6年後の1978年(昭和53年)ごろに閉業し、現在は廃墟として現存しています。
考察
「スカイレスト ニューむろと」は、その独特な外観と圧倒的廃墟感から全国的に有名な廃墟です。ですが、営業期間が6年ほどと短いこともあり営業時の情報が乏しく、当時の様子を記録した写真や映像もネット上では確認できません。
そのため、全国的に有名な廃墟でありながら営業時の情報がほとんど無い、謎が多い施設として認知されています。ネット上では短い営業期間について、事件や事故が起こったからではないかと噂されています。
そこで、このブログ記事では「スカイレスト ニューむろと」の様々な謎について、資料を基に考察していきます。
この場所に建てられた理由
「スカイレスト ニューむろと」が建つ室戸スカイライン沿いの室戸岬山頂は、アクセスや利便性が良いとは言えません。にもかかわらず、この場所が選ばれた理由は、近い将来に山頂が開発されることを想定していたからだと考えます。
昭和47年7月16日発行の高知新聞には、「展望レストラン完成 初の民間企業進出 すばらしいながめ」という見出しで、室戸岬山上に展望レストランが完成したという記事があります。記事には室戸岬山頂開発に関する記載があり、「市としては岬突端部は旅館街の移転も含めて景観の復活と保持、山上と周辺は開発歓迎の意向で、こんどの民間企業初進出を喜んでいる」とあります。
このことから、室戸市としては室戸岬突端部にある旅館を移転させて自然な景観を復活させ、室戸岬山頂の開発を望んでいることが分かります。
実際、1970年(昭和45年)に室戸スカイラインが完成した後、山頂には国民宿舎や観光協会直営の売店が完成し、開発の形が出来つつありました。そして1972年(昭和47年)に「スカイレスト ニューむろと」が完成し、今後の室戸岬山頂の発展が期待されました。将来は岬突端部の旅館が山頂に移転したり、新しい観光スポットが建設されることを想定していたのかもしれません。しかし、「スカイレスト ニューむろと」の完成以降、周囲に新しい建物が建つことはなく、現在に至ります。
想定していた役割
「スカイレスト ニューむろと」は、室戸岬の新名所として室戸スカイラインの中心施設および道の駅のような役割を担う想定だったのだと考えます。
今後開発される想定の室戸岬山頂だからこそ将来的に、立ち寄る人のためのトイレや展望台、休憩する人のためのレストランやお土産売り場が必要だと考えたのではないでしょうか。結婚式場や宴会場は、今後、山頂に旅館や観光スポットが建った際に求められる設備だと見越してのことだったのかもしれません。
「足摺海底館」をライバル視
また、先ほどの昭和47年7月16日発行の高知新聞には、「西の竜串の海中展望塔に負けじと、東の室戸岬に山上展望レストランが十六日オープンする」とあります。
記事にあるように、1972年(昭和47年)7月に東の室戸岬で「スカイレスト ニューむろと」が完成する半年ほど前、1972年(昭和47年)1月に西の足摺岬に「足摺海底館」という海中展望塔が完成しました。
「足摺海底館」は海上7メートルの高さに展望部分が十字に張り出しており、「スカイレスト ニューむろと」と展望部分の構造が似ています。東西でどちらも岬という立地、そして完成時期と構造が似ていることから互いにライバル視していたのでしょう。
独特な設計の理由

出典:2024年8月筆者撮影
「スカイレスト ニューむろと」は高さ17メートル、直径3.5メートルの柱3本から1階と3階が3方向に張り出し、2階部分が吹き抜けとなっている独特な設計の構造をしています。
独特な設計の要因について、先ほどの昭和47年7月16日発行の高知新聞によると、自然公園法規制区域のため、美観保持の観点から設計が再三変更されたことが書かれています。
記事には建物の設計に関して記載があり、「直径三・五メートルの三本の支柱を十七メートルも伸ばし、風の強いことを勘定に入れ二階部分を吹き抜けにした変則三階建て。一、三階は三方に張り出し岬方面はもとより、徳島や高知の海岸線など緑と青のすばらしい景色が楽しめる。」と書かれています。
このことから、自然保護法による美観保持と強風対策を考慮した結果であると考えられます。
推測ですが、自然保護法で周囲の景観を損なわないよう建物の高さが制限されたため、展望部分を張り出すことで景色を遠くまで眺めやすくしたのではないでしょうか。また、強風が吹き荒れることから吹き抜けを設ける対策が必要です。そのため中央に吹き抜けを設けた結果、中央の柱のみで張り出した展望部分を支えることとなり、太く高さのある柱が3本飛び出る構造の設計となったと考えます。
「「スカイレスト ニューむろと」の歴史と現地レポ-2024年8月訪問」で「鉄骨鉄筋コンクリート造」ということが判明したように、この条件をクリアするため3本の柱のみで展望部分を支えることと、強風に耐えることを考慮して頑丈に作られているのだと考えます。
展望部分の外壁だけが朽ちた理由

出典:2024年8月筆者撮影
建物の老朽化を見て分かるように、張り出した展望部分の外壁だけが剥がれ落ち、周囲と比較して脆弱な部分であることが分かります。
この要因として、窓ガラスの開口部を広くすると補強材が少なくなってしまうことと、中央の柱から離れた外壁部分を重量のある鉄骨やコンクリートで補強すると、中央の柱にかかる負担が増えてしまうことが考えられます。
それを考慮し、外壁には軽量鉄骨と薄いコンクリートを貼り合わせた結果、その部分だけが脆弱となってしまい、展望部の外壁だけが周囲より朽ちてしまっていると考えられます。
大砲のような換気口

出典:2024年8月筆者撮影
「スカイレスト ニューむろと」には、3つの柱の上部に大砲のような突起がそれぞれ3か所あります。
この突起は換気口の排気フードだと考えられます。排気フードを水平方向で大砲のような形状にすることで雨風が入りにくくなり、コンクリート製にすることで耐久性と統一感をもたせることができます。柱の上部に換気口が必要だった理由は、湿気対策と火災時の排煙のためだと思われます。
湿気対策の理由は、「鉄骨鉄筋コンクリート造」だからです。先ほど、「スカイレスト ニューむろと」は「鉄骨鉄筋コンクリート造」であると述べました。「鉄骨鉄筋コンクリート造」は湿気がこもりやすく室内にカビが発生しやすいというデメリットがあります。3つの柱の内部には、それぞれ1階から屋上まで螺旋階段がつながっており、螺旋階段の中央部に支柱がないため1階から屋上まで吹き抜けのようになっています。そのため、窓を開けなくとも全ての階の空気が抜けるようにしていると考えます。
火災時の排煙の理由は、煙が上にあがっていく性質を利用しているからです。最上階である柱の上部に換気口を設けることで、どの階で火災が起こったとしても自然と螺旋階段を通じて上部の排気口から煙が排出されるようにしていると考えます。
閉業した理由
「スカイレスト ニューむろと」は1972年(昭和47年)7月18日に開業しました。しかし、開業から6年後の1978年(昭和53年)ごろに閉業してしまいました。
閉業の理由に関して、正確な答えは不明です。
わずか6年ほどで閉業した要因として、以下の3つのことが考えられます。
オープン当初からの売上低迷
「スカイレスト ニューむろと」の魅力として、「室戸スカイラインにおける大規模休憩施設である」「展望台から360度景色を楽しむことができる」、「室戸岬の景色を楽しみながら結婚式ができる」が挙げられます。
推測ですが、展望台や休憩施設としての需要はあったものの、大きな収入源である結婚式やレストランとしての需要が少なく、運営できるほどの収入を得ることが難しかったと考えます。そうなると維持管理の支出が増えていくことになります。もしかすると、オープンして早い段階から赤字経営となっていたのかもしれません。
修繕費のコスト増加
室戸岬は強い潮風が吹いており、室戸岬山頂に建つ「スカイレスト ニューむろと」は建物の高さもあって常に潮風にさらされています。さらに室戸岬は、台風銀座と呼ばれるほど台風が接近します。そのため建物へのダメージが大きく、頻繁な修繕が必要だったと考えます。また、時には強風による建物破損や営業停止があったのかもしれません。
山頂開発の見通しの誤り
ブログ前半で述べたように、室戸スカイライン完成によって国民宿舎や売店が作られ、室戸岬山頂が開発されつつありました。「スカイレスト ニューむろと」はそれに続く新名所となると同時に、山頂へ初の民間企業進出でした。室戸市としても初の民間企業進出である「スカイレスト ニューむろと」を歓迎し、今後の民間企業の進出による山頂開発を期待していました。このように「スカイレスト ニューむろと」は、将来の山頂発展を見越して建設されたのです。
しかし、「スカイレスト ニューむろと」の完成以降、周囲に新しい名所ができることはありませんでした。「スカイレスト ニューむろと」は大きく見通しを誤ってしまったからこそ、6年という早さで閉業を決定したのだと考えられます。
まとめ
以上が、「スカイレスト ニューむろと」の独特な設計と閉業した理由などの考察です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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